おはようございます。ラジオ牧師の山下正雄です。
今月はイエス・キリストと出会った人々を取り上げてお話しています。今週はいよいよクリスマスを迎えます。クリスマスはキリストの誕生を記念する大切な日です。もちろん、その日が歴史的にキリスト誕生の日であったかどうかは問題ではありません。たとえ、歴史的にその日が確定されたとしても、キリストを自分の救い主として受け入れる信仰がなければ、クリスマスが一年のどの日に来たとしても意味がありません。
さて、キリストの誕生の次第を記したマタイによる福音書には、不思議な記事が記されています。救い主キリストがお生まれになったとき、東の国の学者たちが遠い国からわざわざ訪ねてやってきたというのです。キリストが誕生したその国では、誰も気に留めなかったキリスト誕生ですが、外国の学者たちが、わざわざ訪ねてくるというのは不思議です。しかも、キリスト誕生の祝賀パーティーの招待状が届いたからというのではありません。言ってみれば、彼らが訪ねてきたのは、彼らの信念によったのです。
学者といえば聞こえが良いですが、彼らの仕事は占星術であったと言われています。星の動きが人を支配していると考えられていた世界では、占星術は欠かせない仕事でした。もちろん、星の動きの観察は、後には天文学にも発展しますから、すべてがいかがわしいというわけではありません。その学者がユダヤへやって来たのは、不思議な星を見たというただそれだけのことです。彼らの信念によれば、その星はユダヤで新しい王が誕生したことを告げる星であったというのです。
関心のない第三者から見れば、それは滑稽な行動であったかもしれません。たったそれだけのために、時間と費用をかけて、危険をも顧みないでやってくるのは、無謀としか言いようがありません。しかも、そうしたからといって、何の得になるわけでもありません。
しかし、この占星術の学者にとって、この新しく生れた王を訪ねることは、すべてを犠牲にしても価値あることと思われたのです。
マタイによる福音書に記されたこの話の面白いところは、ユダヤの国では新しい王誕生の知らせは誰の耳にも、だれの関心にも上っていなかったということなのです。まことの救い主である王が、ダビデ王の末裔から現れることは、預言者の言葉によって何百年も前から伝えられていたにもかかわらず、その日が到来したことを、だれも知らなかったのです。
当時、ローマ帝国から権威を授かってユダヤの地を支配していたヘロデ大王は、自分の地位を脅かす新たな王の誕生を占星術の学者から耳にして、赤ん坊の王を殺そうと企みます。
聖書に造詣の深い律法学者たちは、預言者の書き残した言葉に従って、メシア誕生の場所までも突き止めながら、それでもそこへ行こうとはしません。
ただ、メシア誕生とはほとんどなんの関係もないはずのこの外国の占星術の学者たちだけが、生れたばかりの救い主イエス・キリストを訪ねたのです。
キリストとの出会いは、そういうものなのかもしれません。だれも予想しなかったところで、キリストを求める人が起こされてくるのです。言い換えれば、この出来事を通して、神はキリストを、すべての国の人々の救い主として、誕生させたということなのです。神がお遣わしになった救い主は、救いを求める者たちに、それがユダヤ人であろうと外国の人であろうと、すべての人に開かれているのです。