いかがお過ごしでしょうか。東京練馬の光が丘にあります東洋宣教教会で牧師をしております、尾崎純と申します。
今日は、文豪トルストイの小説から、今まさに死の淵に臨んでいる人の心の中を紹介したいと思います。
「自分が苦しむ理由は、この真っ暗な穴の中に吸い込まれようとしているからだが、しかしもっと大きな理由は、自分がその穴にもぐり込みきれないからだと。穴にもぐり込むのを邪魔しているのは、自分の人生が善きものだったという自覚であった。まさにその、自分の人生の正当化の意識がつっかえ棒となって彼の前進を阻み、何よりも彼を苦しめているのだった。不意になにかの力が胸を突き、わき腹を突いて、さらに息苦しさがつのった。と、彼は穴の中に落下していった。そして前方の穴の果てに、なにかが光り出したのだ」。
そこで彼は、自分が自己中心的であったことに気づきます。そして、そのために周囲の人々が苦しんでいたことに気づきます。そして、自分本位でない生き方の大切さを悟ります。そうすると、死への恐怖は嘘のように去り、彼は安らかな最期を迎えたのです。
私たちが死を恐れるのは、自分本位だからです。自分本位ということと、魂の安らぎは両立しません。自分本位を手放したところに、「自分が生きることを許されている」ことが発見されて、穏やかに生きることができるのです。
けれども、こんな簡単なことを、人間は誰もできないでいます。だから、キリストはあなたのところに来てくださったのです。