悪いアハブ王が、イスラエルの王国を治めている間、ユダの国では何が起こっていたでしょう。神様を畏れるアサ王は、41年間治めた後、死にました。彼はみなに大そう愛されていたので、立派な葬式が行われました。
その子、ヨシャパテが王にされました。ヨシャパテも良い王でした。国は栄え、人々は幸福でした。ヨシャパテは、自分の国、特にイスラエルの国と繋がっている北の境界線をかためました。彼は、こういう境界にある町のまわりに高い壁を巡らし、そこに兵隊を置きました。また父アサが、イスラエルから奪ったエフライムの街々にも、兵を置きました。主はあらゆることにヨシャパテを助けられました。彼はダビデのように主なる神を求めたので、主はヨシャパテを大そう喜ばれました。神様は、ヨシャパテにたくさんの富を与えられました。
ユダの王が神に忠実なために栄えるのを見て、まわりの国々も、神を畏れ、尊ぶようになりました。これらの国はどれも、ヨシャパテと戦おうとしないで、いろいろな贈り物を持ってきました。国を強くするため、ヨシャパテは、5人の指揮官のもとに十万人以上の訓練された軍隊を作り上げました。この賢い王は、もっと大切なこともしました。彼は全ての人に、モーセの律法を教えるため、何人かの人を任命しました。それ以前は、民は立法を学ぶ機会にあまり恵まれていませんでした。本は大変貴重だったので、王様とか大金持ちでなければ手に入れられませんでした。そのころの本は印刷されていなくて、丁寧に手で書かれていました。紙の代わりに、羊の白い皮から作られた羊皮紙というものが用いられました。みなさんが、もしその頃の本を見ても、本だとは思わないかもしれません。今の本のような形をしていません。昔の本は一枚一枚の紙から作られていなくて、細長い羊皮紙の両端に棒をつけたものでした。それはちょうど掛け軸を巻くように巻くためです。
善良なヨシャパテ王は、民に神のおきてを教えることに心を配りましたが、一つ大失敗をしました。神様を忘れた悪いアハブ王と友だちになったのです。たくさんの家来と兵隊を連れて、ヨシャパテはアハブ王を訪ねました。彼のために素晴らしいご馳走が用意され、国中の貴族が呼ばれました。
晩餐の最中に、アハブは、ヨシャパテに言いました。「あなたは、ラモテ・ギレアデが我々のものであることを知っていますか。スリヤの王はそれを我々から奪いました。スリヤ王と戦って、あの町を取り返さなければなりません。一緒に行ってくれますか。」ヨシャパテはアハブに同意しましたが、神様に尋ねないうちは戦争に参加したくありません。アハブは、ヨシャパテに、自分がもう神様を礼拝していないことを知られたくなかったのか、それとも、最近の二つの戦いで神様が助けてくださったので少し信仰を得たせいか、とにかく400人のにせの預言者を集めました。
これらの人は、バアルの預言者でもなければ神の本当の預言者でもありません。全然預言者ではなかったのです。ただ、神様が自分に話された素振りをし、自分で勝手に預言を作り上げたのです。アハブ王は、この人たちに「私はラモテ・ギレアデに戦いに行くべきか。あるいは控えるべきか」と聞きました。これらの人は、神様から何の言葉もいただいていません。ただ、王を喜ばせたかったので、「上って行きなさい。主はその町を王の手に渡されるでしょう。」と言いました。この間の戦いで神様が助けてくださったので、今度も助けてくださると考えたのかもしれません。
ヨシャパテは、彼らが神様の本当の預言者でないことを見抜きました。そこで「あなたのお国には、まことの主の預言者がいないのですか」と尋ねました。アハブは、「国には、主の預言者が一人います。ミカヤという人です。彼は、私に良いことを預言せず、ただ悪いことだけを預言するので、私は彼を憎んでいます。」と答えました。ヨシャパテ王は、「王よ、そう言わないでください。」と答えました。彼は戦いに出る前に神様からの本当の言葉を聞きたかったのです。アハブは、ミカヤに直ぐ来るようにと使いを出しました。
二人の王は、サマリヤの門の近くで周りに家のない所に二つの王座を置いて座りました。その前には、「ラモテ・ギレアデに上って行きなさい。主はそれを王の手に渡されるでしょう。」と言い続ける400人の預言者たちが立っていました。にせ預言者の一人は、鉄で二つの角を作り、二人の王の所にきて言いました。「主はこう仰せられます。『あなたはこれらの角をもってスリヤ人を突いて彼らを滅ぼしなさい』」。これらの言葉は、他の預言と同様に嘘でした。神様は、語られなかったのです。
二人の王は町を取り返すため戦うべきなのでしょうか。使いの者は本当の預言者であるミカヤを探し当て、「預言者たちは一致して王に良いことを言いました。どうぞ、あなたも良いことを言ってください。」と言いました。ミカヤは、神様の本当の預言者で、悪い王を喜ばせるために預言を作り上げるような人ではありません。彼は使者に憤慨し、「主は生きておられます。主が私に言われることを申します。」と言いました。この決意をもって預言者は、400人のにせ預言者を前に王座に座っている二人の王の前にでました。
アハブ王はもう一度、「ミカヤよ、われわれはラモテ・ギレアデに戦いに行くべきか、あるいは控えるべきか。」と聞きました。ミカヤは皮肉たっぷりに「上って行って勝利を得なさい。主はそれを王の手に渡されるでしょう。」と、にせ預言者のまねをしました。アハブは、預言者の声の調子から、嘲られているのを知り、怒って、「幾たびあなたを誓わせたら、あなたは主の真実のみを告げるのか。」と言いました。すると、ミカヤは両手を挙げ、幻を見るかのように顔を天に向け、「わたしはイスラエルがみな牧者のいない羊のように山に散っているのを見ました。そして主は、『これらの者は飼い主がいない。彼らをそれぞれ安らかにその家に帰らせよ』と言われました。」と言いました。もちろんこの幻は、もしアハブが戦いに行けば殺され、イスラエル人に王がなくなることを言ったものです。アハブは、ヨシャパテに向かって、「彼が私について良いことを預言せず、ただ悪いことだけを預言するとあなたに告げたではありませんか。」と言いました。しかし、ミカヤはまだ終わっていません。また彼は手を挙げ、幻を見るように目を上げ、命令口調で「私は主がその王座に座り、天の万軍に囲まれているのを見た。主は、『誰がアハブをいざなって、ラモテ・ギレアデに上らせ、彼を倒れさせるであろうか』と言われました。一人の霊はこのことを言い、もう一人の霊は他のことを言いました。
ついに、一人の霊が進み出て主の前に立ち『私が彼をいざないましょう』と言いました。主は、『どのような方法でするのか』と言われたので、彼は『私が偽りをいう霊となって、アハブ王のすべての預言者の口に宿りましょう』と言いました。さて、アハブ王よ、主は偽りの霊をあなたの預言者の口に入れられました。そのいうことは偽りです。あなたがラモテ・ギレアデに行けばそこで死ぬと主は私に告げられました。」と言いました。
アハブ王は、ラモテ・ギレアデに行くのを止めたでしょうか。いいえ、この厳しい預言にもかかわらず、アハブ王は、自分の思う通りにしようとしました。彼は前にスリヤ人を二度も負かしたので、もう一度勝てると思いました。前の勝利は自分の力ではなく、主の助けがあったから勝利できたのだということをアハブは忘れていました。
長い間、アハブは異教徒のように神様のことを考えず神様に従おうともしないで生活してきました。それで神様がミカヤを通してこう言われても、アハブにはたいして意味がなかったのです。400人の預言者は、ラモテ・ギレアデに行くように彼に言い、行かないように言ったのはたった一人です。彼は400人の言うことに従いたかったのです。アハブは、不愉快な預言をしたミカヤを懲らしめようと思い、家来を呼んで、「この者を獄屋に入れ、パンと水をもって彼を養い、私が勝利を得て帰って来るのを待て。その預言が当たらないことを知るであろう。」と言いました。
二人の王は、ラモテ・ギレアデに行きました。アハブは、立派な王の服装をしないで、普通の兵隊のような着物を身に付けました。自分が誰か、誰にもわからなければ殺されることはないと思ったのです。ところがアハブは、ユダの王、ヨシャパテには、王としての服装を付けるように言いました。アハブは、敵がヨシャパテをイスラエルの王と間違えて殺すかもしれないと考えたのでした。スリヤの王は、32人の隊長を兵の上に置いていました。これらの隊長はみな普通の兵隊とは戦わないで、イスラエルの王を殺すようにと言われていました。王の衣をつけたヨシャパテ王を見た時、これらの隊長は彼こそたずねている王だと思い、ヨシャパテを囲んで捕えて殺そうとしました。ヨシャパテは、「私はイスラエルの王ではない」と叫びました。隊長らも彼がイスラエルの王でないことを見たので追うことを止めました。
たまたま一人のスリヤ兵が弓をひいて、何気なく矢を空中に放ちました。ところがその矢がアハブ王に当たり鎧の結び合わせの小さい穴に刺さりました。アハブは、戦車の御者に「私は傷を受けた。私を戦場から運び出せ。」と弱々しく言いました。傷ついた王は、自分の戦車の床に血にまみれて横たわり、すさまじい戦いが続けられる中で、出血多量でとうとう夕方に死にました。その兵たちは、彼をサマリヤまで連れ帰り、そこに葬りました。アハブの家来たちは、戦車をサマリヤの池で洗うため持って行きましたが、町の野犬が、ナボテが石で撃ち殺された所で、アハブ王の血をなめました。こうして、エリヤの預言は成就したのです。