【高知放送】
【南海放送】
おはようございます。南与力町教会の坂尾連太郎です。
今月は「神の国」というテーマについて御言葉から学んできました。本日がその最後となります。今朝取り上げたいのは、イエス様が「最後の晩餐」において語られた御言葉です。ルカによる福音書22章14節から18節をお読みいたします。
「時刻になったので、イエスは食事の席に着かれたが、使徒たちも一緒だった。イエスは言われた。『苦しみを受ける前に、あなたがたと共にこの過越の食事をしたいと、わたしは切に願っていた。言っておくが、神の国で過越が成し遂げられるまで、わたしは決してこの過越の食事をとることはない。』そして、イエスは杯を取り上げ、感謝の祈りを唱えてから言われた。『これを取り、互いに回して飲みなさい。言っておくが、神の国が来るまで、わたしは今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してあるまい。』」
この後もルカによる福音書では最後の晩餐の場面が続いていきますが、本日はその前半部分をお読みしました。最後の晩餐でイエス様が語られた言葉は、4つの福音書それぞれに記されていますが、少しずつ違いもあります。このルカによる福音書に特徴的なことは「過越の食事」との関係が明確に語られていることです。
「過越」というのはイスラエルがエジプトに降りかかった災いから過ぎ越され、救い出された出来事を指しています。イスラエルはかつてエジプトで奴隷状態にありましたが、神様によってそこから救い出されたのです。「過越の食事」とはその救いを記念しお祝いする、年に一度の特別な食事でした。
イエス様はご自分が十字架で苦しみを受ける前に、弟子たちと共に過越の食事をしたいと切に願っておられました。そして次のように言われました。「言っておくが、神の国で過越が成し遂げられるまで、わたしは決してこの過越の食事をとることはない。」さらに、ぶどう酒の杯を取り、感謝の祈りを唱えて言われました。「これを取り、互いに回して飲みなさい。言っておくが、神の国が来るまで、わたしは今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してあるまい。」
イエス様はここで「神の国で過越が成し遂げられるまで、わたしは決してこの過越の食事をとることはない」、また「神の国が来るまで、わたしは今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してない」と誓っておられます。これはいったい何を意味するのでしょうか。「神の国で過越が成し遂げられる」とは、神の国において救いが完全に成就する、実現するということです。そしてその救いを喜び祝う食事、すなわち祝宴も神の国において完全な形で実現するということです(イザヤ25:6-10参照)。
そしてイエス様はその時まで、ご自分は決して過越の食事をとることはないと誓われたのです。またぶどう酒についても、「神の国が来るまで、わたしは今後それを決して飲まない」と誓われました。それはただイエス様がこれから十字架にかけられ死なれるからそれが最後の食事になるということだけではありません。イエス様は死から復活し、天に上られました。イエス様は今も天においてその時を待ち続けておられるのです。
ある人が夕食の準備をして、家族の帰りを待っておられる場面を想像してみましょう。もうおいしいご飯はできています。おいしいお酒が用意されているかもしれません。しかしその人は飲み食いせずに家族の帰りを待っています。それはやはり家族と一緒に喜び楽しみながら食事をしたいからでしょう。イエス様が今日のところで、神の国が来るまで、すなわちそこで救いが成し遂げられるまで、決して過越の食事を食べない、ぶどう酒を飲まないと誓っておられるのは、やはりイエス様が弟子たちと一緒に喜び楽しみながらその祝宴を味わいたいと願っておられる、そういう思いが込められているのではないでしょうか。
そしてイエス様は、弟子たちがこれから神の国に入るまでに様々な苦しみや試練を経験することをご存じでした。イエス様ご自身が十字架の苦しみを経て栄光に入られました(ルカ24:26参照)。そしてそのイエス様に従う弟子たちもまた、多くの苦しみを経て栄光の御国に入ることになるのです(使徒14:22参照)。だからこそイエス様はご自分だけが先に過越の食事を食べたり、ぶどう酒を飲んだりはなさらないのです。そして、神の国で私たちと共に喜びの食事を味わうことを今も天で待ち続けてくださっています。
聖餐式とは、その神の国での祝宴の前味であり、先取りです。しかしそれはあくまで「前味」にすぎません。イエス様が再び来られ神の国が到来する時に、私たちの救いは完全に実現し、私たちはイエス様と共にその救いを喜び祝う食事を味わうことになるのです。それはどれほど素晴らしいものでしょうか。イエス様は今も天においてその時を待っておられ、やがて再び天から来られ、救いを完成してくださいます。ですから私たちもその時を待ち望み、希望をもって御国への旅路を歩んでいきたいと思います。